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2009年 02月 17日
フォト・エッセイ 第三章 「Nikonと言う特別」
 K先生のカメラで知った『Nikon』のカメラ。
父のマミヤシックスしか知らなかったので、子供心にもNikonってどんなカメラなんだろうと言う興味が大きな期待感を伴って湧いてきたのは確かだった。
 
 駅前にSカメラと言う、当時としては大きなお店があった。
正面から覗くと大きなショーウィンドーの中に沢山のカメラやレンズが並べられていて、 その中でも、カメラの正面に三角形の出っ張りのあるカメラが目に付いた。
そして、それはJAZZ少年が初めて目にした一眼レフカメラだった。
当時、そのお店はSONY製品も扱っていて、ステレオでクラシック音楽も流していたので、私は音楽を聴く振りをしてショーウィンドーの一眼レフカメラに額をくっつけるように見入った。
きっと、店員さんはショーウィンドーに付いた少年の涎を毎日拭かなければならない羽目になっていただろうと思う。
そのショーウィンドーの中の一番高く目立つ場所に、K先生のカメラでも見慣れていた『Nikon』の文字が三角屋根に刻まれたカメラが鎮座していた。
それは、いくつもの神話を生んできた名機『Nikon F』だった。
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『そんなにカメラが好きかい?』
『それなら、特別にこれあげるから!』

ある日、何度も何度もショーウィンドーを覗くJAZZ少年に、店員さんは親切に『Nikon F』のカタログを差し出してくれた。
大人だって、買う見込みのない客には渡さなかったようなとても立派なカタログだった。

 読んでみても知らない言葉や横文字が並んでいて、何のことかは理解できなかったが、カタログに載っているカメラの写真を毎日毎日飽きもせずに眺めていた。
カタログで初めて見た色々な形のレンズ。
いかにもプロの道具と言う感じのするブラックボディー。
どれもこれもが、JAZZ少年のカメラに対する憧れを後押しするような目に見えない力となっていったような気がした。
そのうち、『Nikon F』はどうやらプロカメラマンが使うカメラらしいこと、一般の人には高価で縁のないカメラであることなども朧気ながら分かってきた。
しかし、顕微鏡の世界から星の世界まで撮影できるようなシステムカメラであることなど、カタログの文言はJAZZ少年の心を更に躍らせた。
それと同時に、『Nikon F』はJAZZ少年がどんなに憧れようと、絶対に手にすることの出来ない神の領域のカメラであることも身にしみて感じたのだった。

 しかし、世の中、そんなに高価な一眼レフカメラばかりではなく、何とか一般の人でも買えるような価格帯のものもあった。
中学生になったJAZZ少年は、そんな情報をせっせとかき集めて、父の大好きなテレビの上にわざとカタログを置いて、否が応でも父の目に触れるようにする作戦をとったのだった。
 その作戦が功を奏して、中学2年生になった春に大衆機ではあったが、念願の一眼レフカメラを買って貰ったのである。
『PETRI V6』と言うカメラだった。
1/1000秒がない、シャッターボタンが前に斜めになって突きだしている、等明らかに『Nikon F』に比べれば見劣りする外観や性能だったのだが、それはそれ!
どんなに見劣りしようが、なんたって一眼レフカメラには違いなかった。
JAZZ少年は枕元にカメラを置いて寝たのだった。
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 さて、せっかく買って貰った『PETRI V6』で最初に撮影したものとは・・・・。
実は、これが今自分で考えても分からないくらい変なのである。
「どうして?」、「なんで?」、「Why?」・・・・・・。
今で言えば『うっそ~! 信じらんな~い!』なんて言われそうなくらい、およそ中学2年生のガキが撮るようなものではないのである。

それは、梅が盛りの偕楽園で笑顔でポーズをとっていた『梅娘』だった。




今では立派なメタボオヤジになってしまった、かつてのJAZZ少年は、クロームとブラックのNikon Fをそれぞれ所有しています。
確かに今の時代、憧れのNikon Fを中古で購入することは容易いのですが、自分の手で実際にカメラを触ったり操作していると、やはりカメラとしての歴史の重みや精密機械としての魅力は計り知れないものがあります。
購入しないまでも、中古カメラを扱っているお店に行かれましたら、是非ともNikon Fを手にとって見てください。
きっとその魅力の一端は感じていただけると思います。


by jazz-photo | 2009-02-17 21:55 | フォトエッセイ


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